2018年04月20日

私は臓器を提供しない

「私は臓器を提供しない」
 近藤誠 他著 新書y刊

先日、オランダで全国民を脳死ドナーにするという話があった。
怖かったv
オランダ国民でなくてよかった。
しかし、もし旅行中にオランダで脳死になったら、外国人であってもドナーにされる危険性があるんだろうか?
北欧では全国民ドナーというのがたまにある。
やだな、そんなん。

結構前の話だが、東欧の小国からやってきたビジネスマンがアメリカで強盗に遭い、財布パスポートなど金目の物を取られて路上に放置され、発見されたときは脳死状態だった。
運び込まれた病院では、この人の身元をちゃんと確認することなく、臓器を摘出し、取れるだけの部位を取って、後にはわずかな皮膚と骨が残っただけだった。
国から一緒に来てた人が、彼がホテルに戻ってこないので、警察に届けでて、後日身元が判明した。
病院側は「身元がわかるものを持っていなかったから、浮浪者だと思った」と言い訳したが、彼はオーダースーツを着ており、内ポケットに名前が刺繍されていた。
珍しい名前で、警察に届けを出せば、身元が判明しただろうと言われた。
実際、そのスーツから身元が判明した。
(そもそも、浮浪者なら勝手にドナーにしてもいいのか?)
国際問題になったが、所詮、アメリカ相手に小国がどうこうできることはなく、うやむやにされたと記憶してる。

そこに脳死の体があれば、病院はどんな言い訳でもつけて、臓器を取る。
カネになるし、執刀数が増えれば病院としても売りになる。

脳死というのは、臓器移植のために作られた死だ。
私には、死とは思えない。
そもそも、死とは何かというと、個々によって意見は違う。
心臓が止まった時か、体が冷たくなった時か、遺族が死を受け入れた時か、人間らしい振る舞いができなくなった時とも言えるし、他者に忘れられた時だとも言える。
脳死は、臓器移植医の考える死だ。
死の概念が人によって違うのに、医学会で決めた死なので、国に認めさせただけだと思う。
脳死は、医師の判断のみで決められるので、さじ加減でどうとでもなるというのも不信感を抱かせることになると思う。
それこそ、浮浪者とか、身元不明とか、遺族がやいやい言ってこなさそうな患者が運ばれてきた場合、脳死と判定されやすくなるのではないかと。

本書にあるのだが、
「脳死はいずれ心臓も止まるから、死だという、すぐに死ぬから、この体に何をしてもかまわないということではない」
これは全くその通りで、若い女性の自殺のニュースを見た時に、
「もったいない。どうせ死ぬなら、やらせてくれればいいのに」
とある男性が言って、ぞっとした、という書き込みをネットで見た時と、同じ気持ちになった。

日本で初めて脳死からの臓器移植の際の流れが書かれているのだが、これでよく、移植をしたなと恐ろしく感じた。
「脳死だ、臓器提供だ、となったときに、何故か、麻酔医が主治医となる、外科医が臓器を取り出すために腹部にメスを入れると、ドナーの血圧が上がり、痛みを感じているようだということで、主治医の麻酔医が麻酔を施し、臓器を摘出、搬送、移植」
何故、死んでいる人間が痛みを感じるのだ?????
そこで、何故、止めなかった??????
執刀医はその体から臓器を取り出すことに、何の感情も抱かなかったのか。
臓器提供ありきで、コトが進んでいるのがよくわかる。
医者は「死んでいる」と言ったが、ほんとは死んでなかったんじゃと思わせる。

「交通事故で脳死になった女性の夫が、妻はドナーカードを持っていたと言う、じゃあとってきて、と言われて家に取りに帰る、はいこれです、と渡して、臓器提供の家族の同意が得られたことになる」
という流れなのだが、この女性が持っていたドナーカードは古く、脳死での移植に関する法律ができる前のもので、これで果たして本人の意思だと言えるのか疑問。
脳死患者が出たぞー!と、病院前にマスコミが押し掛け、移植あるのか?と報道合戦をする中、患者の治療より、脳死判定して、臓器移植をできるのかということばかりに、病院内も外も意識がいっていた感じ。

ドナーカードを持っていると、適切な救命医療をする前に打ち切られる可能性がある、と本書で心配されているが、まさにそんな感じ。

本書によると、常に脳死ドナーが不足している状態をなんとかするには、高速道路の制限速度の上限を10マイルあげればいい、と試算した人が、アメリカでいるそうだ。
いや、多分、冗談か嫌味なんだろうけど。
冗談か嫌味であってくれv
それと、アメリカで銃規制が進まないのは、脳死になる人の何割かが銃による犠牲者だから、とうがった見方さえできる、とか。
病気で脳死になるのは、脳血管になんらかの問題がある人が多く、高齢者で、ドナーとしては不適格、脳血管に問題があるということは、臓器もよい状態ではないから。
しかし、無謀運転の交通事故とか、荒っぽい喧嘩の果ての発砲事件とか、起こすのは若者で、ドナーとしてはとても優秀なんだとかでvv
コワイよ・・・。

とある口腔外科医は、人に会うと、口元ばかり見てしまい、
「あー、この人、受け口、ここをちょっと切って、ちょちょっといじればいいだけなのになー」
とかいうことを考えてしまうそうだ。
移植医療関係者も、人に会ったときは、
「この人の臓器はどれが使えそうかなー」
とか考えているのだろうか。

医療従事者と話していて思うことなんだけど、医者の中には、患者はまな板の上の鯉で、自分の好きにしていい、自分に手柄をくれるための存在、どうだ、上手に料理できただろう、と披露、自慢したいのであって、鯉が痛かろうが、辛かろうが気にしたことがないという感じの人がいる。
特に外科医の「俺は神」的な勘違いが怖い。
まあ、手術医だと、患者の麻酔がかかった姿しか見てないから、同じ生き物という感覚が持てないのかもしれないけど(手術前後にあいさつくらいはしてるけど)。
共感能力が高くて、患者に感情移入してたら、人の体にメスなんか刺せないとは思う。
しかし、なーvv

本書は脳死からの臓器移植に反対する立場の人、医者、思想家などの人たちの文章集。
ただ、賛成する人の立場もわからないではない。
本人と家族の同意がある場合はいいと思う。
私は反対なので、私や私の家族はドナーにならないし、提供も受けたくない。
逆に、提供を受けたい人や家族は、ドナーになる覚悟を持つべきだと思う。
国民すべてがドナーとかいうのはおかしい。
死の定義を国に押しつけられて、死んでいないと思っている体から臓器を取られるなんておかしい。
posted by ちー at 21:59| 知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月09日

ウォッチメーカー 他

「ウォッチメーカー」
「ソウルコレクター」
「バーニングワイヤー」
 ジェフリー・ディーヴァー著 文藝春秋刊

ライム&サックスシリーズ。
「ウォッチメーカー」で出てきた人が続けて登場するので、三つまとめて。

前作で新人警官として出てきて、頭をがんがん殴られ、大けがした人がサブキャラとして定着した。
うん、この役どころの人、前もいたんだよ。
でも、大怪我で退職しちゃったようなんだ。
そりゃ、警察にいたら、色んなことはあるけど。
でもって、前の人のことがあるので、このキャラが危機に瀕するたび、緊張感が増す。
それは本を盛り上げる効果としてありなんだろうけど。

「コフィン・ダンサー」でも思ったけど、この作家の悪役は、悪いが魅力もある。
「ウォッチメーカー」もそういう悪役が出てくる。

「コフィン・ダンサー」に出てきたプロの殺し屋は、やってることが殺人じゃなければ、自分の哲学を持ち、それに沿って行動し、魅力的な人物だった。
やってることが殺人でなければ。

ウォッチメーカーを自称する人物も、やってることが殺人でなければ、好人物とも言える。
目的のために、ものすごく勉強する、自分の痛みとも向き合う。
その情熱が、殺人にしか向けられなかったのがv

同じ作家の本をたくさん読んでいると、癖が把握できて、展開も読めてくるが、この作者はなかなか読ませない。
どんだけひきだしあるんだ、すごいな。
posted by ちー at 22:34| ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月23日

遮断地区

「遮断地区」
 ミネット・ウォルターズ著 創元推理文庫刊

イギリスの低所得者層が暮す地区に、小児性愛者が引っ越してきたという噂から、反対デモを企画したが、それがやがて暴動へと発展してしまう。
噂の元になった人物のところへ、そうとは知らないまま訪問していた女医が、暴徒への盾として人質にされる。
一方で、噂の人物が元々住んでいた場所で、少女が行方不明になる。

低所得で、教育程度も低いため、小児性愛者と小児科の単語の区別がつかないまま、小児科医を「ヘンタイめ!」と襲ってしまうような人々が住んでいる地区。
クスリを使っている人も多いので、一旦騒ぎが起こると、あっという間に凶暴化、凶悪化してしまう。
小児性愛者は悪なので、私刑でもよし!となってしまって、火炎瓶などを用意。

もうね、ムチャクチャですわv
貧乏で、仕事もろくになくて、暇なのもイカンのだと思う。
でも福祉で食べていける。
貧乏なのに、クスリを買うことはできるっていうのがvvいや、盗んでるのかもしれんが。

ウォルターズなので、希望のある終わり方をするけど、読んでる間は、あの、あの、アイツが、気持ち悪くて気持ち悪くてvv
こいつには火炎瓶を投げたくなる気持ちがわかる・・・。

多分、本の中より、現実の方がひどいんだろうと思う。
posted by ちー at 23:33| ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月14日

石の猿 他

「石の猿」
「魔術師」
「12番目のカード」
 ジェフリー・ディーヴァー著 文藝春秋刊

ライム&サックスシリーズ。
「石の猿」は蛇頭による中国人の密入国に関する話で、中国ネタいっぱい。
「魔術師」はイリュージョニストが殺人者となり、捜査陣を翻弄する。
「12番目のカード」は黒人少女がレイプされそうになった事件をきっかけに、過去が現在に大きな影響をもたらす。

どれもページターナーで、これだけ高品質の本を量産できるとは、作者すごい。
しかも、シリーズもので、読者を飽きさせないように、毎回違う分野を深くつっこんでるのがすごい。
資料調べだけで数か月かけているそうで、よっぽど優秀なブレーンがついているのかな。

「コフィン・ダンサー」で犬死にした警官たちに交じって、大けがしたサブキャラが出てこなくなって、寂しい。
あの人、退職したのか・・・。
ひょうひょうとして、いい人だったのに。

あと、料理が得意で、ライムの毒舌をさらりとかわす、介護士トムさん(細身の美青年)。
一家に一人欲しい。
posted by ちー at 01:43| ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月06日

江戸の園芸

「江戸の園芸 自然と行楽文化」
 青木宏一郎著 ちくま新書刊

タイトルに園芸とあるが、三分の一もなく、あとは江戸の行楽と、公園のなりたち、みたいな内容。
園芸の本だと思って読んだので、ちょっと期待外れだった。
別の本を執筆したとき、削った分を、もったいなくて本にしたとのこと。
ああ、それで。
なんだかなーな、ばらばら感。
posted by ちー at 23:32| 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月04日

エンプティ・チェアー

「エンプティ・チェアー」
 ジェフリー・ディーヴァー著 文藝春秋刊

ライム&サックスシリーズの第三弾。

ライムが手術のために訪れた田舎町で、誘拐事件が起き、協力を依頼される。
NYで鑑識をしてきたライムにとって、他の地域では勝手が違う。
誘拐犯は何かと悪い噂のある虫好き少年。

そして、不測の事態で、ゲイだとばらされてしまうトムさん(ライムの介護士)vv
気の毒vv

表紙がしゃれてる。
英字で表記されてて、「h」の字だけ色が違って、長い影がついて、イスみたいに見えるようになってる。

posted by ちー at 15:54| ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月15日

悪魔の涙

「悪魔の涙」
 ジェフリー・ディーヴァー著 文春文庫刊

元FBIの筆跡鑑定士がテロ捜査に協力する話なので、脅迫状の分析が重要になって、これを日本語に訳すのは大変だったろうなv
英語の言葉遣いが、移民っぽいとか、つづりが間違ってるとか、脅迫状の文面(手書き。筆記体)の絵もついているんだけど、英語がわからない人だと今いちぴんとこないだろうし。

相変わらずのどんでん返しの連続で、うまくだまされた。
でもあの結末はちょっと強引かなあ。
あの人が半年も潜伏してたのも、そんなの可能だろうかという気がするし。
posted by ちー at 23:45| ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月02日

コフィン・ダンサー

「コフィン・ダンサー」
 ジェフリー・ディーヴァー著 文藝春秋刊

リンカーン&サックスのシリーズ2作目。

これは〜〜〜vv
いや、相変わらずのどんでん返しの連続で、ストーリーテラーなのは認めるが、いかんせん、人が死にすぎ。
しかも、犬死にv

逮捕された武器商人が、自家用飛行機で証拠物件を海に投棄したのを目撃した三人、証言させたい検察側。
でも、その目撃ってのも、夜中に自家用飛行機を使うところを見ただけなので、その証言で有罪にできるか、あやふや。
しかし武器商人が雇った暗殺屋が、目撃者たちを狙う。

目撃者は同じ飛行機会社の経営者やパイロットで、経営が危ういところ、新規の取引先を本契約にしようとしていて、何が何でも仕事に穴をあけられない。
だから、証人保護施設で、裁判まで匿ってもらっている場合じゃない。
仕事にいかねばならないと意地を張る。
外出して狙われる。
かばって警官たちに被害が出る。
いやもう、証言のための取引として、会社の資金繰りをなんとかしろと検察に条件だして、保護施設でじっとしてろよ#
有罪に持ち込めるかも定かでない証言をさせるための証人、どんどん殺される犬死にの警官たち。
なんで、すっごいやな感じ。
証人が死者続出にまるで頓着してないのが〜vv
「だって仕事に行かなきゃ、会社がつぶれるのよ!」
え〜v警官たちは仕事で殺されてるんですけど〜〜〜vv

犬死にした警官たちの遺族はどうなるんだとか、やっぱり考えてしまう。
もうちょっと死なない展開でも、話に支障はなかったろうし。
posted by ちー at 21:36| ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月26日

七王国の騎士

「七王国の騎士」
 ジョージ・R・R・マーティン著 早川書房刊

「氷と炎の歌」シリーズの、本編の百年ほど前、中編集。
灌木の下などで野宿をしながら暮らす騎士、通称草伏しの騎士の放浪記。
魔法はほぼ出てこないので、中世騎士物語っぽい。
マーティンなので、いい人はどんどん死ぬ。
posted by ちー at 21:02| ファンタジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月15日

ボーン・コレクター

「ボーン・コレクター」
 ジェフリー・ディーヴァー著 文藝春秋刊

著者の出世作。
デンゼル・ワシントン主演で映画化もされているが、著者は出来に不満だったらしい。
まあ、白人の役なのに、ハリウッドの大人の事情で黒人が演じているのもナニなのかも。

首から下がマヒした安楽椅子探偵と、女性警官が反発しあいながら事件を解決する話。
ぎりぎりまでどんでん返しの連続で、心地よく振り回された。
でもあのラストは、可能なのか?
と、ちょっと思った。
映画化したら、絵にはなるのか・・・?コワイけど。

好評のため、シリーズ化したそうで、続きも読んでみる。
posted by ちー at 23:05| ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする